経営者ならば、「もっと内の会社の売上を上げたい…」と思うのは当然ですが、それ「だけ」ではダメというのを教えてくれるのが、古屋 悟司、田中 靖浩両先生のご著書「「数字」が読めると本当に儲かるんですか?」です。

現役の経営者が書いた管理会計の本

田中先生は、「実学入門 経営がみえる会計―目指せ!キャッシュフロー経営」などのご著書もある管理会計の大家。分かりやすい語り口には定評があります。そして、今回紹介する本が面白いのはもうお一方の著者、古屋 悟司先生は現役の経営者なのです。「ゲキハナ」というインターネットの花屋さんは、本書をはじめて読んだときは設定かと思ったのですが、実在しています。しかも、今では本書のノウハウをまとめたサイト「黒字会計.jp」の運営もされているとのことです。

この古谷先生の実体験が盛り込まれているのがなんと言っても本書の魅力です。詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、インターネットの花屋さんが大当たりして一気に年商1億円になったけど、儲からずに倒産寸前。そこをなんとか乗り切って、いまは限界利益を意識した経営で年商5千万円程度とのこと。まるでフィクションのようなストーリーですが、実話なのでしょう。

管理会計で見た「利益を出すための唯一の方法」

本書の前半は、管理会計の解説で、ここは類書と大きく変わりません。本書の白眉は後半の「利益を出すための4つの方法」(223p)。具体的には、

  1. 今よりも価格を下げて、販売数を圧倒的に増やす
  2. 今と同じ価格で、販売数を増やす
  3. 今よりも価格を上げて、販売数はそのまま、または減らす
  4. 今よりも原価を下げて、販売数はそのまま、または減らす

の四つです。結論としては、この中から3を古谷先生は勧めています。まず1に関しては、ネットの花屋の経験から、大失敗したのでダメだ、と。管理会計を使った説明では、

10%値引きした場合は、10%多く売ればいいわけではありません

となります。

一方、選択肢の2は、古谷先生のビジネスではうまくいかなかったそうで、

なぜ赤字なのかというと、商品の限界利益率があまりに低かったため、効率が悪かったんです。ひと言で言うならば、薄利多売です。もしも、限界利益率の高い価格設定になっていれば、この方法で黒字転換が可能だと思います。

となります。

次の選択肢4は、

僕の経験上(現在、花屋を14年やっていますが)、今まで原価が下がった商品はありません

とのことで、これまたうまくいかなそう。もちろん店をチェーン化して大規模に仕入れれば可能なのでしょうが、これもなかなか現実的ではないでしょう。

と言うことで、結論としては消去法で選択肢3が正しい道と言うことになります。もちろん、価格を上げるためには、その金額に見合った付加価値をお客様に提供することが大前提になりますが。

管理会計を使った経営の小技

本書の魅力は、上記以外にも日比使えそうな管理会計のノウハウが詰まっているところ。たとえば、「毎日の利益をチェックする方法」(217p)では、

  1. 今日までの売上合計
  2. 平均の限界利益率
  3. 今月の固定費(予測額)

から、「今」、利益があるかないかを判別する方法論を解説しています。つまり、売上合計×限界利益率で限界利益を求めて、それが固定費を上回っていれば利益がある、と言うのを検証する方法です。

さらに、「人を雇う前に確認すべき3つのこと」(203p)では、

  1. 業務を効率化して今の人数でできないだろうか?
  2. 雇わずに外注することはできないだろうか?
  3. 雇った場合、給与を支払っても資金繰りは大丈夫か?

というチェックポイントが提示されています。さらに、指標についても明確で、

従業員一人あたりの限界利益=年間の限界利益÷社長を含めた全従業員数

が、中小企業の場合1,000万円、上場企業の場合1,500万円程度になるとのこと。

なお、会社全体での限界利益率にも目安があり、

「私が知る限り(限界利益率が)25%以下で黒字になっている会社は少ないです」

とのことです。