「BS(バランスシート)アプローチ」というキーワードで、世界で一般的になっている決算書の読み方を解説しているのが本書です。ただ、若干難易度が高いと感じましたので、ある程度知識がある方向けなのでしょう。

吉成 英紀著、世界のエリートがやっている 会計の新しい教科書

また、説明中で仕訳やT字勘定が出てくるので、決算書を「使う」=実業サイドではなく、決算書をつくる=税理士や会計士などの専門家サイドの視点が色濃く出ているのも特徴です。

ちなみに、海外のMBAでは本書のような会計の話は一切扱いません。したがって、タイトルにある「世界のエリート」も、会計士などの専門分野でのエリートを指していると思われます。

【マーケティング面でのポイント】
●「世界のエリート」、「教科書」という旬なキーワードを押さえたタイトル

●「BSアプローチ」とキーワード化したことで分かりやすさを演出している

●裏表紙の帯で初心者がつまづく8つのポイントを明示しあるある感を演出

【コンテンツ面でのポイント】
●今までの日本の会計の教え方は、ひと言で言うと、大人がモノゴトを理解するために不可欠な「定義」と「論理」の説明が欠けています。

●外国では、本書で言うところのBSアプローチ、あるいはそれに近い方法が、会計教育の主流になりつつあります。

●従来の教え方では、BSとPLの二つは必ず同時に教えるものでした。…BSの一部の明細記録としてPLが存在する、と言う説明の流れになります。

●資産のポイント
1.実質的所有
2.取得原価主義
3.減価償却
4.減損

●PLアプローチは初心者にとって分かりにくい。…収益と費用という言葉自体、日常用語ではありませんね。初心者にはピンとこないんです。

●会計入門本でつまづく8つのポイント
1.簿記や会計の本を読もうとすると、1ページ目からなぜかいやになる
2.資産と負債はイメージがわくが、資本というのが、どうも良く分からない
3.収益と費用については日常の仕事でなじみがあるが、資産や負債はよく分からない
4.簿記の勉強をしたときに、「なぜそうなるか」の説明がないので途中で分からなくなった
5.BSとPLのつながりがよく分からない
6.仕訳をするときに、減ったら逆に書くというのがなぜか分からない
7.収益と費用の仕訳で、自分で何をしているかが分からなくなった
8.いつまで経っても、自分が会計の基本が分かっていないように感じる

●繰延税金資産、貸倒引当金などの勘定科目、固定資産減損会計などを解説している

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